腸内細菌

腸が紡いだ知性

SF

第1章 途絶えた声 藤村真理は、遠心分離機の回転音が少しだけ高くなる瞬間が好きだった。一定のノイズの中に、目に見えない境界が生まれる。沈むものと、残るもの。今日もまた、透明なチューブの中で世界が二層に分かれていく。 培養室の壁に貼られたスケジュールには、赤字で「PNAS 1月号」と書き添えてある。腸脳相関の新しい論文。真理にとっては「ようやくここまで来た」という感覚だったし、同時に、何かが遅すぎる […]