キーボード

最後のキーボード

SF

第1章 百億 「百億」 競売人の声が落ちると、場内に短い沈黙が生まれた。誰も拍手をしない。歓声もない。ただ、値が確定したという事実だけが、静かに空気を押し広げていく。 男は深く息を吐いた。 百億。初期型 Happy Hacking Keyboard、限定五百台の PD-KB01 に支払った金額だ。 男自身、その数字に実感はなかった。ただ、これ以上つり上げる者が現れなかったことに、奇妙な満足を覚えて […]